haien sorch

好みの音楽探しのための個人的備忘録

◯突弦変異/平沢進

突弦変異

何の気なしに過去自分が書いた投稿を見直していたんだけど、聴きながらリアルタイムで書いてるものはやっぱり読みにくくて、後から整理されてるものは読みやすい。それだけで面白いし、自分で面白いって思えるって大事なのでできれば丁寧に書いてこう。
自分にとっての意味もやりながら模索しているのでしょっちゅうやり方も変わる。


先日ブックオフ平沢進が大量に置いてあるのを見つけた。普段ほぼないからこうして行動範囲で買えるとうれしい。迷った挙句このアルバムを買った。
このアルバムは平沢進ソロ活動20周年、およびP-MODEL結成から30周年の年に記念として製作開始された。還弦主義というアルバムと同時に出されたが、そのアルバムが平沢進としてのセルフカバーを弦で試みたものだったのに対して、この突弦変異(打つのめんどくさいなこれ)はP-MODEL時代の曲をアレンジしたものが集められている。
P-MODELのアルバムは実際ほとんど聴いたことないので元々の雰囲気はほぼ知らない。それでもなぜこのアルバムを買ったのかというと、YouTubeで色々聴いたりしていてどうしても欲しかった音源がけっこう入っていたから。


全体的な感想としては、いいとこ悪いとこ色々あるけどとにかくやっぱり平沢進はすげえと思った。


・アート・ブラインド
壮大。物々しく静かに入るイントロから、迫力推しでコーラスが入ってくる。
これはこのアルバム全体に言えることだと思うんだけど、彼の弦の使い方は、クラシックのある流派をしっかり踏襲しようとするものではなく彼独特のもので、この壮大かつ重々しい雰囲気を出すことがその主目的だと思っている。証拠とかは特にないけど…
曲の中でボコーダーボイスや厚いコーラスで一貫して「未来はきれいに」と繰り返される(調べるまで「左巻きで右」としか聞こえなかった…)
弦、ホーン、ティンパニ、ハープなどでひたすら物々しく重々しい。が、リズムセクションが少し癖があって、やってることは四つ打ちなんだけど使う楽器が大太鼓とスネアで、なんだか違和感。
スネアの音もよく聴くとぺしゃと貼り付ける感じでどことなく不自然。こういう微妙に安っぽい感じが、けっこうアルバムを通してそこかしこで見られる。というか彼の曲だいたいがそんな感じもする(もちろんきれいな音も多いしメロディや展開は独特ですばらしいと思う)。


・ミサイル
この曲はほんの少し聴いたことがあった。なぜか平沢がドラム叩いてた動画を見たことがある。そういえばこの曲が入ってるアルバムも衝動買いしてたけど通して聴いてないな…
明るい曲なんだけど歌詞も皮肉っぽいし明るい皮肉みたいな曲。こういうことを平沢はけっこうやる。
イントロから長調タイ語で交わされる会話の後に入るリズムはまさかのドンパパドンパ(大太鼓かティンパニにハンドクラップ)。一緒に弦のリフも加わる。
かなりヘンな曲だけど2回目のAメロで入ってくる刻んだシンセは好き。このシンセのおかげで曲が引き締まる気がする。ホログラムを登る男でこういうシンセが多用されてた気がする。
あれ、最初聴いた時は気にしてなかったけど、間奏辺りから弦と管楽器のかけあいが面白く思えてきた…
長調だったのに短調になる。弦楽器も管楽器もそれぞれのフレーズがあって、内声もしっかり動いててわちゃわちゃしているところにシンセは音色を微妙に変えながら同じリズムで鳴っている。
それぞれのセクションがかなりバラバラに違うことをやるのが彼のオーケストラの特色な気もする。ホログラムを登る男(曲の方)の間奏も確かそんな風な弦だった。
短調の間奏を経てまた長調のAメロに戻るけど、最初の方から鳴っているリフが持っていたケレン味のあるフレーズの中に狂気がまだ残って聴こえる気がする。
唐突に終わる。


・Solid air
そりでわーーー
全体的に弦推しなのかな。嵐の中のような暗い曲。
リズム隊はいつもの平沢っぽく、ハイハットにかなり硬めの高いスネア。
ミュンミュン言うシンセも入ってる。徐々にいつものテクノ寄りのサウンドになってきた。
ピアノも入っているけど音色は明るく硬め(悪く言うと俗に安っぽいと言われるやつだと思う)。
サビになって音量が倍ぐらいに上がる。びっくりするからやめてほしい。いきなり叫ぶし
うーん。あんまり好きじゃない曲。


・CHEVRON
ミドルテンポでゆったりしたリズムの曲。
イントロ好きだな。短調なんだか長調なんだかわからない感じとか、弦リフの暖かく穏やかな感じとか。
Aメロになってからは長調そのものでただ穏やか。ナイスんんん〜とかシェブロンんん〜↑とか、ハミングを何事もないかのようにメロディーに組み込むのも好き。
間奏に特に、優しくて暖かいんだけど異国の情緒が漂う。砂漠の国の宮殿の中みたいな。そこに近未来感漂うギターのソロが入る。液体金属みたいな音がする。


・LEAK
好きな曲だなー。東京異次弦空洞の動画で見て好きになった。
Aメロ、サビ、間奏の繰り返しなんだけどなぜか聴いてしまう。
ひとつはメロディがいい!つい歌いたくなってしまう。リズムまであんまり意識したことなかったけどマーチングスネアなんだ。
サビのすごく安っぽいホーンセクションはハルディンホテルを思い起こさせる。優しい曲だしアリという感じはするけど。
サビをよく聴くと女性コーラスも遠ーくうすーく入っていた。でもすごく重要な要素だと思う。


・ASHURA CLOCK
この曲はP-MODEL時代の曲も知っていて、そっちはスピード感と近未来感が溢れているんだけど、このアレンジはリズムも遅く、弦やコーラスが物凄い数重なる中に仰々しいティンパニが鳴り響いていて、迫力がアルバムいち凄い。ただ俺は原曲のが好みだな…。
とにかく、一丁ゴツくしてやるか!という意思をだいぶ感じる…メインリフに当たる部分も間奏もサビも。アルバムのほぼ最後に当たる曲なので山場として持ってきたのだろう(ホログラムを登る男というアルバムの制作秘話を語るインタビューでも山場を作った話があったので想像に難くない)。ネタとして受け取れる程にあまりにも分かりやすいので、好みが分かれると思う。
よく聴いてみると、控えめな存在感の四つ打ちのキックが大太鼓ではなくテクノのキックの様な気がする。太鼓を響かせる代わりに1.3拍目に入るティンパニを立てたかったんだろうか。
この曲の一番の肝はやっぱりサビの迫力だと思う。もともと原曲のサビのコーラスにやられてこの曲を好きになったんだけど、このアレンジでは迫力が120%増しの凄いことになっている。完全に別物で、原曲ではせいぜい5人程度のコーラスなんだけどこっちでは物凄く沢山の声が重なっている。
平沢はたまにこういうことをして通称バカコーラスと自分で呼んでいるんだけど、これはどこまで自分の声でどこからソフトの声なんだろう。全部自分の声のような気もする。あまりにも重なりすぎて一人一人の声がもうよくわからず、各パートがおぼろげに聴こえる。
原曲ではメロディと重なる高音のコーラスの響きとそのハーモニーの圧がとても好きだったんだけど、こっちではあまりにも数が多い上に弦とホーンもここぞとばかりに張り上げるので声は遠巻きになって聴こえてしまう。
さらにこのアレンジではサビのピアノと弦のリズムが6/8になっている。原曲ではリズムトラックはそのままだったんだけど、確かに6/8を混ぜると更に表拍が強くなって迫力が増す。
間奏もマーチングスネアが加わってダイナミックな展開になっている。ミサイルのところでも書いたけど、平沢がよくやる、このどこに収まるか分からないまま進んでいくタイプの間奏は好きだ。


・Another Day
このアルバムを買うときの一番の目当てはこれだった。ダントツで好きな曲。このブログを始めたとき一番最初に触れた曲もこれ。
とにかくメロディと歌詞が良い!歌詞は抽象的だけど始まりを感じさせるしそのバランスが絶妙だと思う。間奏の語りも、アルバムを通した最後の曲で語られていると考えるとなおのこと彼の人生を振り返っての言葉に思える。
リズムは刻むようなマーチングスネアが主で、ティンパニが勢いをつけている。よく聴くとかすかに四つ打ちの大太鼓が聴こえる。16分でシンセが鳴っている。
今気づいたんだけど、右からアコースティックギターのバッキングが聴こえる!平沢の曲でバッキングが聴こえることはそうそうないので嬉しい、と同時にストロークの勢いやそれを弾く姿が見えてきて曲に一気に生っぽさを感じられるようになった。
サビの掛け合いも「Another Day」と「日暮らすtoday」が交互に表れるのが本当にいい。今日のすぐ隣に違う可能性の日があって、それは過去から見れば自分には違う可能性があったということだし、今の視点ではこれから色んな未来を選択しうるということ、更に言うと今の自分は過去の自分が夢見た違う可能性の自分そのものでもあるということ。
曲構成の意味でも、転調する前と後では歌詞もオケも全くと言っていいほど同じだけど、それがかえって現在と違う可能性の日が隣り合わせであることを物語っているようにも取れる。
よく聴くとこの曲だけ最初に前の曲(ASHURA CLOCK)の最後の音の響きの切れ端が残っている。すぐ続くようにしたかったんだろうか。
さっきも少し書いたけど、この曲がアルバムの最後にあることで曲のメッセージ性がぐんと跳ね上がっている。いい終わり方をするアルバムだと思った。


終わり!すごく疲れた。なんか目的もよく分からないままくどくど書いてしまった。おまけに時間も鬼のようにかかってしまった。
でも最初に聴く他にじっくり聴く機会ができたのは面白い。逆にこうでもしないと飽きるほど聴くことはなかなか難しい。
とにかく平沢進は唯一無二の独創性を持っていて、それはいいことも悪いことも引っくるめて唯一無二だということが再確認できた。とてもかっこいいと思う。


10曲

ミサイル
LEAK
GOES ON GHOST
WIRE SELF
Dustoidよ歩行は快適か?
ASHURA CLOCK
Another Day