haien sorch

音楽にまつわる個人的備忘録

◯Richard D. James Album/Aphex Twin

Richard D. James Album [帯解説 / 国内盤CD] (BRC556)

 

 

アルバム3枚買って2枚目。
ジャケがとにかく印象的で前から欲しいと思っていた。
6枚目のオリジナルアルバム。
前作のI Care Because You Doから激しい作風へ変化して行ったと聞いていたのでブレイクコア的なぶっ飛んだやつを想像していたけど、ジャケほど直球の凶悪さではなく、これは後述するけど、むしろ穏やかで静かな歪みのようなものをありありと感じた。

1曲目の4は柔らかくて程よく複雑なブレイクビーツ。特に弦にチープな感じも漂うけどかっこいい。時々大きくなるスネアやキックのリバーブにambient worksの雰囲気を感じる。

Corn Mouthは少し激しめのブレイクビーツ。展開も好きだけど終わり頃にFAXの通信音みたいなのが混じってくるらへんからが特にいい。

To Cure A Weakling Childら辺から幼さのイメージが強くなってくる。「僕の足と腕と耳、そしてあなたのビート」って歌詞は踊りのことを指していると思うんだけど、タイトルが「弱った子供を治癒する」なのはどんな意味だろう。

Yellow Calx細かくて楽しい!calxと付く曲は他のアルバムでもいくつか見たけど、今のところこれが一番好きかもしれない。

Girl/Boy Song、このアルバムでたびたび弦の音を聞いたけど、タイトルと相まって幼年期を彷彿とさせる穏やかな弦のフレーズと、軽い音だけど何かを振り切ろうとするように暴れるビートが、アルバムの中で一番対照的かつ一体となっている気がする。それ以外の上物の少なさも斬新…
更に終盤弦と鉄琴だけになってから一気に炸裂するところが特に良い。弦も鉄琴も、一歩間違えれば手垢にまみれたような感情的なフレーズがこのアーティスト(しかもこのジャケ)から出て来るのが不思議で仕方ない。
ビートが炸裂するシーンではそれらが打って変わって、何かを諦めたように穏やかになるのもとても良いと思う。
こんなに激しいのに全体的に何かが足りないようなセンチメンタルな気分にさせられる、すごいバランス感覚の曲だった。

Milkmanについて変な曲だと思って調べたら「朝起きてミルクマンが牛乳を届けてくれたらいいのに。ミルクマンの奥さんの〇〇からミルク飲みたいな」って歌詞だった。声は中年男性が気だるげかつ純真無垢そうに歌うからとても気持ち悪い…

アルバムの要所要所から幼児性や幼年期のイメージがする。
アルバムのタイトルはAphex Twinの本名だけど、Richardは生まれてすぐに亡くなった兄の名前を取っていて、真ん中のDは本来決まっていたDavidの頭文字らしい。アルバムの冊子も、凶悪なジャケを1枚めくると兄の墓と隣に佇む誰かの影の写った写真だった。
生まれ故郷のcornwallも2つのタイトルに使われている。
以下完全な俺の想像の産物なんだけど、
Girl/Boy Songでは対立してMilkmanでは一体となっていた幼児性とそれを抱える当時25歳の自分自身、または自身に対する感情について向き合ったアルバムなんじゃないかという結論に至った。
頭の方で触れた歪みというか決まりの悪さともいうべき印象は、このちぐはぐさから感じたのかもしれない。

わかんないけど!

15曲/1996

4
Corn Mouth
To Cure A Weakling Child
Yellow Calx
Girl/Boy Song
Milkman