haien sorch

音楽にまつわる個人的備忘録

◯Selected Ambient Works Volume II/Aphex Twin

Selected Ambient Works Volume II [帯解説 / 2CD / 国内盤] (BRC554)

 

中古CD屋に行ったらAphex Twinがあったので3枚買ってしまった。今まで最初のアルバムと最新作しか聴いてなかったので嬉しい。
このアルバムは本人名義のオリジナルでは2枚目になると思う。イギリス盤のみ1曲多いらしいけどこれは普通のやつ。

最初のアルバムは、たまにアシッドなんかがありつつもメインは奥行きがあってゆったりと響くミドルテンポのテクノで、その優しい感じが好きだった。
ただ同じ名前のこのアルバムはだいぶアンビエント成分の方に傾いていて、ビートさえほとんどない曲が多いらしい。

という具合のアルバムだということをあらかじめ知っていたので、聴くにあたってかなり腹をくくって臨んだ。実際確かにビートになるものが全く無いか、あってもだいたいスローテンポのものだったので、まるで環境音楽を聴いているようだった。正直24曲通して聴き終えるまでに5回は眠ってしまい(というか半無意識というべきか)、かなり大変だった。

ただその分想像の余地があるというもので、さながら壁のわずかな凹凸や天井の染みからイメージを広げていくような聴き方ができた。危惧していたほど聴き応えを得られなかったわけではなく、楽しめた。大変だったけど!

曲や部分によって、自分の横を流れていく風や立ち上る火といった自然、または自分から見えないけれど同じ空間の遠い位置で影を潜めている何かの存在を感じることが多かった。

特に良かった曲をいくつか。
3曲目で、まるでトトロくらいある大きな動物が寝ながら深い呼吸をしているような、ゆったりとした柔らかい反復があってとても綺麗だった。
14曲目はアルバムの中で一番分かりやすくリズムの入っている曲だった。ざらざらしてくぐもった音質の悪さがビートの推進力を引き立てている。
15曲目はメロディもハーモニーもリズムもなかったけど、まるで化物の悲鳴がはるか遠くからコンクリートの壁に跳ね返って聞こえてくるようだった。
18曲目は一番前作に近い作風だったと思う。ハイハットやキックを始めとする色々な音への手の込みようがありあり感じられて良かった。

茫洋とした音楽だったというか、アンビエントとは言っても和音の大きな流れや移り変わりがあればまだ曲の具体的なイメージができるけど、
ここまでリズムパターンが皆無もしくは単一だったり、環境音のような曲が続くとどうしてもはっきりした掴み所がない。
音楽を楽しむというよりはそれを使って瞑想状態になる方が向いているアルバムだった気がした。

世界中の色んな時間・場所の、そこで感じる雰囲気の残像のみを描いたようなアルバムだった。
劇伴とかにかなり適しているんじゃないかと思う。

ちなみに作者は1曲を除いて、このアルバムの曲にタイトルを付けなかったらしい。
ネットで調べると一応全ての曲に名前が付いているけど、どうもファンが付けた名前だとかいう話も見た。
おかげでインポートの時にかなり大変だった。

23曲/1994

#1 (cliffs)
#3 (Rhubarb)
#14 (Shiny Metal Rods)
#15 (Grey Stripe)
#18 (Hexagon)